サウダーヂ第1番「エリオのテーマ」

クラシックはもちろん、ジャズ、タンゴ、シャンソン、ロックなどさまざまな音楽を下地に作品を書き綴ったディアンスが、とりわけシンパシーをもっていたと思われるのがブラジル音楽ですが、最初期の作品《3つのサウダーヂ》(1980年)は、彼のバックボーンをもっともよく表していると言えます。

陽気な主部とノスタルジックな中間部からなるシンプルな第1番「エリオのテーマ」はディアンスの師アルベルト・ポンセに捧げられています。副題の「エリオ」が誰なのか、はっきりと明示はされていませんが、作品内容から考えるとブラジリアン・ジャズの大家エリオ・デルミーロだと考えられます。またエリオがギターソロで演奏している〈ラウンド・ミッド・ナイト〉や〈オール・ザ・シングズ・ユー・アー〉といったジャズ・ナンバーは、ディアンスもかなり凝った編曲を遺しています。