サウダーヂ第3番「バイーア州セニョール・ド・ボンフィムの想い出」

クラシックはもちろん、ジャズ、タンゴ、シャンソン、ロックなどさまざまな音楽を下地に作品を書き綴ったディアンスが、とりわけシンパシーをもっていたと思われるのがブラジル音楽ですが、最初期の作品《3つのサウダーヂ》(1980年)は、彼のバックボーンをもっともよく表していると言えます。

3つのなかでもずばぬけて人気のある第3番は、ディアンスと同世代のフランスのギタリスト、作曲家のフランシス・クレンジャンスに捧げられています。副題の「バイーア州セニョール・ド・ボンフィムの想い出」が表しているように、曲はブラジル音楽のバイアォン(バイヨン)のリズムを骨格として作られていますが、特殊奏法を積極的に取り入れたりロック風のハーモニーを使うなどしてユニークに仕上げられており、その後に核となるようなディアンスの作風が早くも聴かれます。序奏風の「儀式」、軽やかなメロディーが印象的な「踊り」、終わりに向けてよりエキサイティングになる「祭りと終曲」の3部からなります。