亡き王女のためのパヴァーヌ(モーリス・ラヴェル)

シャンソン、ジャズ、ブラジル音楽など他ジャンルの編曲が目立ちがちなディアンスですが、伝統的なクラシックギタリストたちと同じようにクラシック音楽作品も手がけており、ショパン、チャイコフスキー、サティ、ラヴェルといった作曲家のピアノ作品をギター用に編曲しています。すべてがピアノ作品であること、多くがパリで活躍した音楽家であることは、ディアンスの音楽観の表れのひとつとも言えるでしょう(同じように、パリで活躍したギタリストのフェルナンド・ソルを彼が敬愛していたことはよく知られています)。
原曲と同じト長調で編曲され、ギター独特の奏法などをほとんど使うことなくシンプルにアレンジされています。とはいえ、ゆるやかな曲のため聴いた印象では難しいパッセージは判別しにくいものの、かなり複雑な和音まで再現されており、弾き手には堅牢な左手の技術が求められます。和音に対する徹底したこだわりを持つディアンスの音楽性が垣間見える編曲作品とも言えるでしょう。