リブラ・ソナチネ

第1楽章 インディア
第2楽章 ラルゴ
第3楽章 フォーコ

ディアンスの代表作品のひとつである《リブラ・ソナチネ》は、〈インディア〉〈ラルゴ〉〈フォーコ〉の3楽章からなる15分ほどの大作で、1986年に楽譜出版されました。ただし、1985年にリリースされたLPアルバム『ジョルジュ・ブラッサンズ讃歌』(エネスコ四重奏団と共演)にすでに収録されており、作曲はそれより早い時期となります(同じく〈タンゴ・アン・スカイ〉もこのアルバムに収録されています)。つまり、ディアンスが20代のころの作品と考えられますが、すでにディアンスらしい書法や特殊奏法が散りばめられており、ディアンス作品のなかでももっともよく演奏される曲の1つとなっています。

タイトルの「リブラ」とは「天秤座」のことで、作曲者自身の星座を指しています。ディアンスの編曲作品〈ヌアージュ〉(ジャンゴ・ラインハルト)の末尾と同じアルペジオから始まる第1楽章〈インディア〉は、変拍子を多用した蠱惑的な楽章で、弾き手のグルーヴ感が試されます。冒頭と同じアルペジオで消えるように終わると、スフォルツァンドで始まる第2楽章〈ラルゴ〉に続いていき、広いダイナミックレンジと鮮やかなハーモニーで聴き手をドラマティックな世界へ誘って第3楽章への期待を高めます。そして次にくる〈フォーコ〉は、派手なテクニックとそれが織りなす独特な音響で悪魔的な魅力を感じさせる最終楽章で、しばしば単独でも弾かれる大人気曲です。コーダまで疾走するように勢いよく進み続け、最後は特殊奏法をふんだんに用いたフレーズで爽快に作品を締めくくります。